― 日本人の原風景をアクリル絵具で描く絵師、智内 兄助(チナイ キョウスケ) ―
このたび、ギャルリーためなが大阪におきまして、7年ぶり3回目の個展となる「智内 兄助 展」を2022年6月18日(土)から7月10日(日)まで開催いたします。智内兄助は和紙にアクリル絵具を用いるという、日本画と洋画の境界を越えた革新的な表現技法で、日本の伝統美である衣装文様や花鳥風月を描きます。その作品は智内独自の幻想世界を創り上げ、儚さ漂う優美な画風を確立させました。
本展は2つの新テーマに沿った渾身の力作約30点をお披露目いたします。智内兄助が描く日本の美をご堪能いただけましたら幸いです。
テーマⅠ 「鶴」
日本人の原風景、花木や山を主題に取り組んできた彼の作品に、優雅に羽ばたく「鶴」の姿が加わりました。
智内はここ三、四年、鶴をモチーフにして描いており、"人間は表情があって、笑ったり泣いたり、喜怒哀楽がある。でも鶴の場合はそれがあまりない。代わりに、翼の表情や足の表情、目の表情で感情を表出させている。この、人間とは全く違った奥行きの深さが面白い… “ と語ります。
テーマⅡ 「西条市国安の手漉き和紙との出会い」 『紙に聞け』
智内は古希、70才を過ぎてから絵を描くのが楽になった気がすると話します。 “絵を描くという事”と“生きている”という事とが何だか客観的に刺激しあって“絵の視座”に胆が据わったとも。彼の出身地である今治の近く、西条市国安の手漉き和紙との出会いも大きい。東京藝術大学、油画科の学生時代から様様な表現方法に様様な和紙を使ってきている智内は、この西条市国安の手漉き和紙は70才、古希にして出会うべき紙だったと言います。もし60才、還暦の時では出会っていても多分、手に負えなかったと。その頃は和紙を使っても場合によっては下地ジェッソを何層にも重ねて強固な地盤を築き上げて上へ上へと絵の具を塗り重ねていたと。だがこの和紙はまるで吸取紙の様に絵の具を、水を、含み込み、吸収し、分解し、咀嚼し、消化する。つまり和紙の繊維に逆らわずに地球の重力どおりに下へ下へ降りてゆき、その都度ごとに表情を変えながら。表の面も裏面も。だから先が読めない。彼は〝紙に聞く”しかないと…
だから予定していた表の面よりも裏の面の方が美しいこともしばしばあると言います。
偶発的な紙の変化も自身の作品へと掛け合わせ、常に表現の探求と挑戦を続ける今年74歳の智内の新作をご堪能ください。
智内 兄助(ちない きょうすけ) 1948年愛媛県今治市波方町生まれ
東京藝術大学と同大学院で油画科を学んだ後、1980年代に、和紙にアクリル絵具で描くという日本画と洋画との境界を越えた革新的な様式を確立します。これにより、智内の幻想世界は華麗にそして無限に展開し、智内独自の「日本の美」を誕生させました。2000年以降は活動の場を海外へと広げます。2002年ギャルリーためながパリ店にて開催した初個展を機に、大コレクターであるロスチャイルド家の蒐集が始まり、たちまちヨーロッパの多くのコレクターを魅了、海外で高い評価を得ています。国内におきましても、安井賞をはじめ、数々の賞を受賞し、現代画壇を代表する画家として揺るぎない地位を築き上げています。
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【展覧会概要】 智内 兄助 展
会期 2022年 6/18(土)- 7/10 (日) |